イニシエーション・ラブ 乾くるみ

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

イニシエーション・ラブ (文春文庫)


大学四年の僕(たっくん)が彼女(マユ)に出会ったのは代打出場の合コンの席。やがてふたりはつき合うようになり、夏休み、クリスマス、学生時代最後の年をともに過ごした。マユのために東京の大企業を蹴って地元静岡の会社に就職したたっくん。ところがいきなり東京勤務を命じられてしまう。週末だけの長距離恋愛になってしまい、いつしかふたりに隙間が生じていって…。
目次から仕掛けられた大胆な罠、全編にわたる絶妙な伏線、そして最後に明かされる真相…。80’sのほろ苦くてくすぐったい恋愛ドラマはそこですべてがくつがえり、2度目にはまったく違った物語が見えてくる…。

非常に再読率の高い本だということなので買ってきました。終盤までは普通〜の恋愛小説です。普通すぎて、まるで彼女ができてうかれてる大学生の赤裸々なブログでも見せられてる気分です。ところが、これは普通の恋愛小説ではないのです。そうでなかったら私のアンテナに引っかからないし。
というわけで、この本は事前情報無しで読むことをオススメしますので、まだ読んでない人はレビューなんか見ないように。
以下ネタバレ。
まあ私は「最後の仕掛けで話の内容がガラリと変わるよ」という事前情報ありで読んでたわけですが。
というわけで、最初っから「いったいどんな仕掛けが!?」と気にしながら読んでました。
たぶん叙述トリックなんだろうなあと思って、(どんでん返し系で叙述トリックでないものなんて思いつかないけど)とりあえずざっと予想。
・人間のように書かれているけど人間ではない。(犬とか猿とか)
・男のように書かれているけど女だ。(またはその逆)
・20歳くらいの年齢のように書かれてるけど老人だ。
・A面のあとにB面みたいに書かれてるけどB面の方が先だ。
・A面とB面は同じ世界のように書かれてるけど別世界だ。
・A面のたっくんとB面のたっくんは別人だ。
・A面のマユとB面のマユは別人だ。
・A面とB面の章は交互に展開する。
・B面は全部妄想だ。
・これを読んでいるキミが犯人だ。
さー、これぐらい予測しとけばどれか当たるだろうと。
ていうかこれ以外の全く予想外のトリックだったらおもしろいなと。
……まあ、正解は、本を読んでね。
で、一番おもしろかったのは、その「仕掛け」の部分が本当に最後まで出てこないこと。
「ああっもう最後の章だ、でも仕掛けはまだか!?」
「ああっあと数ページしかないっ、仕掛けはまだか!?」
「ああっもう最後のページだ、仕掛けはまだか!?」
「ああっもうあと数行しかない、仕掛けはまだか!?」
………ていうのがおもしろかったですねー。いやあもう、ひっぱるなあ。本当に最後の行で(正確には最後から2行目)、たった一行で、たった一言で、たった二文字で、この話の世界を覆すのは流石です。
そりゃ再読したくなるよな。私はしないけど。
ドラマのネタや各章題になっている曲名のネタなんかは私にはさっぱり分かりませんでした。
それにしても細かい仕掛けが多いですねー。借りた本、服のタック、水着、タバコ、財布、指輪…一番分かりやすい仕掛けはクリスマスイブでしょうか。
これ、読んでる側より書いてる方が楽しそうな小説だな。


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